19. ミトコンドリアへの移行を通せんぼ−もう一つのアルツハイマー病発症メカニズム−
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王華芹
キーワード
Aβ, FKBP38, Bcl-2
プレセニリン遺伝子変異のアルツハイマー病(AD)発症メカニズムについては、Aβ42の産生促進効果、Aβ産生系とは独立したプロセスによる神経細胞死誘導効果の可能性も議論されている
プレセニリン遺伝子変異によるADの早発神経変性機序として、まずAβ42産生増強効果が挙げられる
プレセニリンの家族性アルツハイマー病(FAD)変異はγセクレターゼによるβAPPの切断位置に影響を与え、通常優位なAβ40位からAβ42位にシフトさせるため、後者の産生を特異的に高め、アミロイド蓄積を促進するものと考えられている
一方、変異プレセニリントランスジェニックマウスではアミロイドの沈着を伴わず神経細胞の変性が加齢とともに進行し、しかも、Aβ42蓄積の程度は必ずしもFAD発症年齢に相関しないことから、プレセニリンにはアミロイドカスケードとは独立したプロセスによる細胞死導入効果があると考えられる
プレセニリンは細胞内では主として小胞体およびゴルジ装置に局在するが、ミトコンドリアにも一部は存在し、プレセニリンがミトコンドリアで何らかの役割をもっていることが示唆される
ミトコンドリア膜の透過性亢進はアポトーシスのシグナル伝達に決定的な役割を果たし、Bcl-2ファミリータンパク質はミトコンドリアの膜透過性を調節することによって細胞の生死を決定している
FKBP38はBcl-2をミトコンドリアにリクルートする役割を果たすが、プレセニリンはFKBP38と結合し、一種のスカフォールドタンパク質としてFKBP38がBcl-2をミトコンドリアにリクルートする機能を抑制し、アポトーシスを促進する
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プレセニリンのFAD変異はγセレクターゼ活性とは関係なくこの働きを強め、早期発症ADの神経変性に関与すると考えられる